研究会案内
東アジア恠異学会
第140回定例研究会/第14回オンライン研究会
日時:2023年2月19日(日)13:00〜
場所:対面・オンライン併用
園田学園女子大学またはzoomにて
対面・オンライン併用での実施を予定しております。参加ご希望の方は、フォームより参加形式をお選びください。
また、対面での参加については、会場の園田学園女子大学で
来学者を管理する必要がありますので、できるだけ
本名(または業務上の通名)での登録をお願いいたします。
※参加ご希望の方は、こちらのフォームよりお申し込みください。
(2月17日(金)正午まで)
(https://forms.gle/6TRKxgWgFDj1Uzbn8)
内容:
○「マンドレイクの採取法—驚異圏と怪異圏をつなぐ伝承」
ー山中由里子氏(国立民族学博物館)
【要旨】
地面から引き抜く際にそのヒト型の根が出す叫び声を聞くと人間は死んでしまう。このような描写が現代のファンタジー小説や映画を通して一般にも広まっているため、マンドレイク(またはマンドラゴラ)は神秘的な力を有した空想上の植物と思われがちであるが、古代から鎮痛・鎮静・催淫などの薬効がある実際の植物として知られてきた。古代・中世ヨーロッパの医学書や博物誌などに表れるマンドラゴラは、今では「マンドラゴラ・オフィシナルム」という学名の付けられた、地中海沿岸に分布するナス科マンドラゴラ属の実在の植物と比定されている。薬としての貴重性と激しい毒性を相持つこの植物の採取法に関しては様々な伝承が、地中海のマンドラゴラの植生分布をはるかに超える地域に伝播した。
本発表ではギリシア語、ラテン語、アラビア語、ペルシア語、中国語の百科全書や医学書のテクストと図像の分析を通し、植物学的・医学的知識と伝承——特に「犬を使って根を抜く」という逸話——の伝播ルートを明らかにする。そして、ユーラシア大陸を横断した語りの伝承力と、交易による人とモノ(薬としての植物や呪物としての偽マンドレイク)の移動について考察する。
○「『関帝明聖経』の諸版本と清代の関帝霊験譚について」
ー小谷友也氏(金沢学院大学大学院)・佐々木聡氏(金沢学院大学)
【要旨】
関羽が神格化した関聖帝君(関帝)に対する信仰は、清代に最も繁栄したとされている。清朝では関帝を国家鎮護の神として崇め、軍事遠征のたびに関帝が清朝を救うという霊験譚が多く創出された。太田出氏は、清朝による関帝の霊験譚に着目し、これらの霊験譚によって清朝皇帝から一般民衆にいたるまでが関帝の加護にあるという意識が共有されたと指摘している(『関羽と霊異伝説:清朝期のユーラシア世界と帝国版図』名古屋大学出版会、2019年 pp.233-234)。
一方、清代における関帝信仰は、民衆にも人気があったことから、民衆間では関帝について書かれた経典が流行した。これを本報告では「関帝経典」と呼ぶ。関帝経典は様々な種類が刊行され、本報告で取り扱う『関帝明聖経』もこうした関帝経典の一つである。
『関帝明聖経』の先行研究としては、王見川氏、李世偉氏、方広錩氏・周斉氏らの研究が挙げられるが、『関帝明聖経』に関する研究の蓄積は多いとは言えない。また『関帝明聖経』にも多くのヴァリエーションがあるが、その中には、「霊験記」などと題した関帝霊験譚を収録するものもある。その内容は、清朝により創出された霊験譚とは異なる性質が見いだせる。例えば「霊験記」には、母や自分の病気を治そうと経典を読経して関帝に祈る人々の姿が記されている。つまり、これらの霊験譚からは、王朝が創出した国家を救う関帝像とは異なる、民間固有の関帝信仰のあり方を垣間見ることができる。したがって、それらを検討することで、より詳細な民衆の信仰文化を明らかにできると考えられる。しかし、これらの民間由来の霊験譚について考察した研究は管見の限りにはない。
そこで報告者らは、現在、「霊験譚」を収録する光緒10年怡怡堂刊本(東アジア恠異学会編『吉兆と魔除け』(同会、2021年)所収17『関帝明聖真経』)を起点として日本で所蔵されている『関帝明聖経』の調査を進めている。本報告では、現状の書誌調査の成果を報告し、「霊験記」の内容を分析して清代の民衆における関帝信仰について考察を試みる。
*オンライン開催ではありますが、講演会ではなく研究会でありますので、
ご参加の方は、ご遠慮なくご意見ご発言ください。
*当会は学術団体ですが、参加資格・制限は特に設けておりません。
当会にご興味のある方は直接研究会においでいただくか、事務局にお問い合わせください。